歯の着色汚れをきれいにしたい、という純粋な思いが、時として、取り返しのつかないダメージを歯や歯茎に与えてしまうことがあります。インターネットやSNSに溢れる玉石混交の情報の中から、間違ったセルフケアを選択し、熱心に続けてしまう。これは、良かれと思って、自分の歯を毎日傷つけているのと同じ行為です。まず、最も陥りやすい間違いが「過度なブラッシング」です。白くしたい一心で、硬い歯ブラシを使い、強い力でゴシゴシと長時間磨いてしまう。これは、歯の着色汚れだけでなく、健康なエナメル質まで削り取ってしまいます。歯の表面には無数の細かい傷がつき、光沢が失われるだけでなく、その傷にさらにステインが入り込み、以前よりも着色しやすい歯になってしまうのです。また、歯と歯茎の境目を強く磨き続けると、歯茎が退縮(リセッション)し、歯の根元が露出してしまいます。露出した象牙質は、知覚過minを引き起こすだけでなく、非常に虫歯になりやすい場所です。次に、研磨力の強すぎるアイテムの乱用です。前述した「重曹」や「歯の消しゴム」、あるいは「粗い研磨剤を配合した歯磨き粉」などを、日常的に使用することも、同様に歯を摩耗させる原因となります。一時的にステインは落ちるかもしれませんが、その代償として、歯の寿命そのものを縮めていることを自覚しなければなりません。さらに、酸性の液体を使ったケアも非常に危険です。レモン汁やお酢などで歯を磨くと、酸によって歯の表面が溶かされ(酸蝕)、一時的に白くなったように見えます。しかし、これは歯の鎧であるエナメル質を自ら破壊する行為に他なりません。歯はもろくなり、虫歯菌の侵入を容易にしてしまいます。正しいセルフケアとは、歯や歯茎を傷つけずに、優しく汚れを取り除くことです。もし、あなたのセルフケアが「力を入れる」「強くこする」「削る」といった方向に向かっているなら、それは危険信号です。一度立ち止まり、その方法が本当に安全で、科学的根拠に基づいているのかを見直す必要があります。迷った時は、必ず歯科医師や歯科衛生士といった、専門家の意見を求めるようにしましょう。
間違ったセルフケアが招く歯と歯茎へのダメージ