食事のたびに、決まって同じ場所に食べ物の繊維が挟まる。そんな不快な経験はありませんか。特に、鶏肉やほうれん草などの繊維質のものが挟まると、舌で取ろうとしても取れず、一日中気になって気分が悪いものです。この「歯に物が挟まる」という現象は、単に不快なだけでなく、あなたの口の中に何らかの問題が起きていることを示す、重要なサインかもしれません。歯に物が挟まりやすくなる原因は、いくつか考えられます。最も多いのが、「歯と歯のあいだの隙間」です。加齢や歯周病によって歯茎が下がると、歯の根元に三角形の隙間(ブラックトライアングル)ができます。また、歯並びが悪く、歯が重なっていたり、ねじれていたりする部分も、物が挟まりやすい場所となります。次に考えられるのが、「虫歯」の存在です。歯と歯のあいだにできた虫歯によって穴が空いていると、そこがポケットのようになり、食べ物が入り込んでしまいます。外からは見えにくいため、本人は虫歯だと気づいていないケースも少なくありません。また、「詰め物や被せ物の不適合」も大きな原因です。過去に治療した金属やセラミックの詰め物と、歯とのあいだに段差があったり、形が合っていなかったりすると、そこに食べ物が引っかかりやすくなります。これは、新たな虫歯(二次カリエス)の温床ともなり得ます。では、この状態を放置するとどうなるのでしょうか。挟まった食べ物のカスは、口の中にいる細菌にとって格好の栄養源となります。これをエサにして細菌が繁殖し、歯垢(プラーク)を形成します。そして、細菌が作り出す酸によって歯が溶かされ、虫歯が発生・進行します。同時に、細菌が出す毒素によって歯茎に炎症が起こり、歯周病が悪化します。歯周病が進行すれば、さらに歯茎が下がり、もっと物が挟まりやすくなるという、まさに負のスパイラルに陥ってしまうのです。歯に物が頻繁に挟まるのは、あなたの口内環境が悪化しているという警告です。その不快感を放置せず、根本的な原因を突き止めて解決するために、まずは歯科医院で相談することが大切です。