デンタルフロスや歯間ブラシを使っても、どうしても歯に挟まった物が取れない。あるいは、取れたけれど、強い痛みや違和感が残っている。そんな時は、無理に自分で解決しようとせず、速やかに歯科医院を受診するのが最も安全で賢明な判断です。歯科医院では、専門的な器具と技術を用いて、安全かつ確実に挟まった異物を除去してくれます。まず、歯科医師は、患者さんから「何が」「いつから」「どのように」挟まっているのかを詳しく聞き取ります。そして、口の中を直接見て、挟まっている物の種類や位置、周囲の歯や歯茎の状態を正確に把握します。この時、肉眼では見えにくい場合、拡大鏡(ルーペ)やマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使って、視野を拡大して観察することもあります。異物の除去には、様々な専用の器具が使われます。先端が細く鋭利な「探針(エキスプローラー)」や、物を掴むための「ピンセット」、歯石を除去するための「スケーラー」などを巧みに使い分け、歯や歯茎を傷つけないように、慎重に異物をかき出したり、つまみ出したりします。自分では届かなかったり、見えなかったりする場所でも、専門家にかかれば、比較的簡単かつ安全に取り除くことが可能です。また、物が挟まっている原因が、単なる食べカスではなく、歯のトラブルにある場合もあります。例えば、虫歯によってできた穴に物が深く食い込んでいる場合や、詰め物と歯のあいだに挟まってしまっている場合などです。このようなケースでは、異物を除去するだけでなく、その根本原因となっている虫歯や不適合な詰め物の治療も同時に行う必要があります。場合によっては、レントゲンを撮影して、歯の内部や骨の状態を確認することもあります。無理に自分で取り除こうとして、異物をさらに奥に押し込んでしまったり、歯や歯茎を大きく傷つけてしまったりすると、治療がより複雑になる可能性があります。どうしても取れない頑固な異物は、いわば「専門家へのSOSサイン」です。恥ずかしがらずに、プロの助けを借りる勇気を持ちましょう。