それは、ごく普通の平日の昼休みでした。いつものように会社の近くの定食屋で、日替わりランチを注文しました。その日のメニューは豚の生姜焼き。柔らかい豚肉とシャキシャキの玉ねぎの食感を楽しみながら、ご飯をかき込んでいました。半分ほど食べ進めた時です。付け合わせの漬物を噛んだ瞬間、奥歯に「ガリッ」という鈍い音が響きました。石でも噛んだのかと思いましたが、口の中に残ったのは、米粒ほどの大きさの硬い塊。舌でそっと触れてみると、それはざらざらとしていて、間違いなく自分の体の一部だと分かりました。血の気が引くのを感じながら、急いでスマートフォンのカメラで口の中を覗き込むと、右下の一番奥の歯の、頬側の角が見事になくなっているのが見えました。幸い、痛みは全くありません。しかし、舌で触ると、欠けた部分がナイフのように鋭利になっていて、常に舌に当たるのが気になって仕方がありません。午後の仕事は、その違和感のせいで全く手につきませんでした。痛みがないから大丈夫だろうか。でも、このまま放置していいものだろうか。頭の中で二つの考えがぐるぐると回り続けます。結局、その日は仕事が終わるとすぐに、夜間診療をやっている歯科医院を検索し、電話をかけました。事情を話すと、幸運にもその日のうちに見てもらえることになりました。診察の結果、過去に治療した詰め物の脇から虫歯が進行し、歯の内部が弱っていたことが原因だと分かりました。先生は「痛みが出る前に来てくれて本当に良かった。放置していたら、神経を抜くことになっていたかもしれませんよ」と言いました。あの時、もし「痛くないから」と自分に言い聞かせて放置していたらと思うと、今でもぞっとします。奥歯が欠けるという体験は、私に体のサインを軽視してはいけないという、大きな教訓を与えてくれました。
ある日の昼食で私の奥歯に起きたこと