歯ブラシの交換は、単に古いものを新しいものに取り替えるだけでなく、自分にとって本当に合った歯ブラシを見つける絶好の機会でもあります。特に、歯ブラシの「毛の硬さ」は、清掃効果と歯や歯茎への優しさを両立させる上で、非常に重要な選択ポイントとなります。一般的に、歯ブラシの毛の硬さは、「かため」「ふつう」「やわらかめ」の三種類に分けられます。あなたは、いつも何を基準に選んでいますか。かつては、「かため」の歯ブラシでゴシゴシ磨かないと、汚れが落ちた気がしない、という方が多くいました。確かに、硬い毛は、歯の表面の頑固なステインなどを落とす力は強いかもしれません。しかし、その一方で、歯のエナメル質を摩耗させたり、歯茎を傷つけて退縮させたりするリスクが非常に高いのです。ブラッシング圧が強い方が「かため」を選ぶのは、最も避けたい組み合わせです。では、「やわらかめ」はどうでしょうか。やわらかい毛は、歯や歯茎に非常に優しく、歯周病で歯茎が腫れている方や、知覚過敏の方には適しています。歯と歯茎の境目にある歯周ポケットの清掃にも向いています。しかし、その反面、弾力性(コシ)が弱いため、歯の表面に付着したネバネバとした歯垢を効率よく除去するには、より丁寧で時間をかけたブラッシング技術が必要となります。そこで、ほとんどの歯科医師や歯科衛生士が、一般の方に推奨するのが「ふつう」の硬さです。これは、歯垢を落とすための適度な清掃力と、歯や歯茎を傷つけにくい優しさを、最もバランス良く兼ね備えているからです。ただし、これもあくまで一般的な推奨です。最終的にどの硬さがベストかは、その人の歯茎の状態や、ブラッシングの癖によって異なります。例えば、歯磨きで出血しやすい方は、「やわらかめ」から始めて、歯茎の状態が改善してきたら「ふつう」に移行する、というのも良い方法です。歯ブラシを交換するタイミングで、一度、ご自身の口の状態を鏡でよく観察してみてください。そして、「いつもこれだから」という惰性で選ぶのではなく、「今の自分には、どの硬さが最適だろうか」と考えてみること。その小さな意識改革が、あなたのオーラルケアの質を一段階、向上させてくれるはずです。