歯の白さへの関心が高まる中、日本の市販品では物足りず、より高い効果を求めて、海外のホワイトニング製品を個人輸入して使用する人が増えています。特に、アメリカなどで市販されているホワイトニングテープやジェルには、日本の基準では歯科医院でしか扱えない高濃度の「過酸化水素」が含まれていることがあり、劇的な効果を謳う製品も少なくありません。しかし、この個人輸入によるセルフホワイトニングには、大きなリスクが伴うことを十分に理解しておく必要があります。最大のリスクは、歯科医師の診断なしに、強力な薬剤を自己判断で使用することの「危険性」です。海外の製品は、当然ながら、その国の人の歯質や安全基準に基づいて作られています。体格や骨格が違うように、日本人のエナメル質は、欧米人に比べて薄い傾向にあると言われています。そのようなデリケートな歯に、海外仕様の高濃度な薬剤を使用すると、激しい痛みや、重度の知覚過敏を引き起こす可能性があります。また、もし自分では気づいていない虫歯や、歯の表面の微細な亀裂があった場合、そこから強力な薬剤が歯の内部に侵入し、神経に深刻なダメージを与えてしまう危険性もあります。歯茎に薬剤が付着すれば、化学熱傷(やけど)を起こし、歯茎が白くただれてしまうこともあります。さらに、「偽造品」や「粗悪品」をつかまされるリスクも無視できません。個人輸入のサイトには、正規の製品を装った、成分不明の危険な製品が出回っていることもあります。そのような製品を使って健康被害が生じても、日本の公的な救済制度(医薬品副作用被害救済制度など)の対象外となり、全て自己責任となってしまいます。確かに、海外製品は劇的な白さを手に入れられるかもしれません。しかし、それは、専門家の管理下で安全が確保されてこそです。歯の健康という、何物にも代えがたいものを失うリスクを冒してまで、手軽さを追求すべきではありません。本当に安全で確実なホワイトニングを望むのであれば、まずは日本の歯科医院に相談し、ご自身の口の状態に合った、適切な治療法を選択することが、遠回りのようでいて、最も賢明な道なのです。