エナメル質は人体で最も硬い組織ですが、日々の生活の中には、その健康を損なう様々な要因が潜んでいます。これらの要因を理解し、適切な回避策を講じることが、エナメル質を長期にわたって保護するために不可欠です。最も一般的な要因の一つは、糖分の過剰摂取です。糖分は口腔内の細菌が酸を生成するための栄養源となり、この酸がエナメル質を溶かします。甘いお菓子や飲み物をだらだらと摂る習慣は、エナメル質を常に酸にさらすことになるため、避けるべきです。また、レモン、グレープフルーツ、炭酸飲料などの酸性度の高い飲食物も、直接的にエナメル質を侵食する「酸蝕症」の原因となります。これらを摂取する際は、短時間で済ませたり、ストローを使ったり、食後に水で口をゆすいだりする工夫が必要です。歯ぎしりや食いしばりも、エナメル質に過度な負担をかけ、ひび割れや摩耗を引き起こす可能性があります。ストレスが原因となることが多いため、リラックス法を試したり、歯科医に相談してナイトガードを装着したりするなどの対策が有効です。不適切な歯磨きもエナメル質を傷つける要因となります。硬すぎる歯ブラシの使用や、強い力でのブラッシングは、エナメル質を削り取るだけでなく、歯茎を傷つける原因にもなります。柔らかい歯ブラシで優しく、しかし確実に汚れを除去する正しいブラッシング法を身につけることが重要です。フッ素は、エナメル質を強化し、虫歯予防に非常に効果的なミネラルとして広く認識されています。私たちの歯のエナメル質は、ハイドロキシアパタイトという結晶構造でできていますが、フッ素がこの結晶に取り込まれると、フルオロアパタイトというさらに安定した構造に変化します。このフルオロアパタイトは、酸に対する抵抗力が非常に高く、虫歯菌が作り出す酸によるエナメル質の溶解を防ぐ働きがあります。また、フッ素にはエナメル質の「再石灰化」を促進する効果もあります。初期の虫歯でエナメル質からミネラルが溶け出した部分に、唾液中のカルシウムやリン酸イオンが戻るのを助け、溶け出したエナメル質を修復する働きです。フッ素は、歯磨き粉や洗口液などのセルフケア製品に配合されている他、歯科医院でのフッ素塗布として高濃度のフッ素を直接歯に塗る方法もあります。
エナメル質を傷つける要因とその回避策