特に虫歯があるわけでもないのに、歯がなんとなく浮いたように感じ、常に肩や首がこり、頭全体が締め付けられるような鈍い頭痛が続く。そんな慢性的な不調の原因は、自分では気づきにくい「噛み合わせの悪さ」にあるかもしれません。私たちの噛み合わせは、非常にデリケートなバランスの上に成り立っています。しかし、歯を一本失ったまま放置したり、高さの合わない被せ物が入っていたり、あるいは親知らずが斜めに生えてきたりすることで、このバランスは簡単に崩れてしまいます。噛み合わせがずれると、私たちは無意識のうちに、顎を不自然な位置にずらして物を噛むようになります。この不自然な顎の動きは、顎の周りにある筋肉、すなわち「咀嚼筋(そしゃくきん)」に過剰な負担を強いることになります。代表的な咀嚼筋には、こめかみにある「側頭筋」や、エラの部分にある「咬筋」などがあります。これらの筋肉が、噛み合わせのズレを補うために常に緊張した状態にあると、筋肉内に老廃物が溜まり、血行が悪くなって、筋肉自体がこり固まってしまいます。この筋肉の緊張こそが、「筋緊張性頭痛」の直接的な原因です。特に、こめかみにある側頭筋は、頭の側面を広く覆っているため、この筋肉が緊張すると、頭全体がヘルメットで締め付けられるような、ズーンとした重苦しい痛みを引き起こすのです。このタイプの頭痛は、しばしば頑固な肩こりや首のこりを伴います。なぜなら、頭と首、肩の筋肉はすべて連動しており、咀嚼筋の緊張が、そのまま首や肩の筋肉の緊張へと波及していくからです。マッサージに行ったり、頭痛薬を飲んだりすれば、一時的に症状は和らぐかもしれません。しかし、根本原因である噛み合わせのズレが解決されない限り、またすぐに同じ症状がぶり返してしまいます。もし、あなたが原因不明の慢性的な頭痛や肩こりに悩まされているなら、それは口の中からのSOSサインかもしれません。一度、噛み合わせの専門知識を持つ歯科医師に相談し、その不調の根本原因を探ってみてはいかがでしょうか。
噛み合わせのズレが引き起こす緊張性頭痛