抜歯後、少しずつ普通の食事ができるようになってくると、多くの人が経験するのが「抜歯した穴(抜歯窩)に、食べ物が詰まる」というトラブルです。ご飯粒やゴマなどが入り込んでしまうと、気になって仕方がないし、不衛生な感じがして不安になりますよね。しかし、ここで焦って無理に取り除こうとすると、かえって事態を悪化させてしまうことがあります。まず、絶対にやってはいけないNG行為は、「爪楊枝や指、硬いものでほじくり出す」ことです。抜歯窩の内部は、まだ新しい肉芽組織や骨が作られている、非常にデリケートな状態です。そこに鋭利なものを入れると、傷口を再び傷つけ、細菌感染を引き起こす原因となります。また、治癒の過程で重要な役割を果たす「血餅(かさぶた)」を剥がしてしまい、激しい痛みを伴う「ドライソケット」を誘発するリスクもあります。では、どうすれば良いのでしょうか。正しい対処法の基本は、「優しく洗い流す」ことです。最も安全な方法は、「穏やかなうがい」です。口にぬるま湯を含み、頭を傾けるなどして、水が詰まった部分に行き渡るようにし、そっと吐き出します。この時、「ブクブク」と激しくうがいをするのは禁物です。強い水圧は、血餅を剥がす原因となるため、あくまで優しく、水の流れで洗い出すイメージで行いましょう。これを数回繰り返すと、表面に乗っているだけの小さな食べカスは、自然と取れてくることが多いです。それでも取れない場合は、どうすれば良いのでしょうか。実は、抜歯窩の内部に入り込んだ小さな食べカスは、多くの場合、無理に取り除く必要はありません。傷が治癒していく過程で、新しい歯茎の組織が下から盛り上がってくるのと一緒に、自然と外に押し出されてくるからです。下手にいじって傷をつけるよりも、自然治癒力に任せた方が、結果的に安全で、治りも早いのです。ただし、食べ物が詰まったことで、強い痛みが出たり、歯茎が腫れてきたりした場合は、内部で感染を起こしている可能性があります。その際は、自分で何とかしようとせず、速やかに抜歯を受けた歯科医院を受診し、専門家による洗浄・処置をしてもらうのが最も確実です。