セルフケアの中でも、より本格的に歯を白くしたいと考える方が行き着く選択肢の一つが、「ホームホワイトニング」です。これは、市販のケア製品とは一線を画し、歯科医院で処方される薬剤と、オーダーメイドのマウスピースを使って、自宅で歯を内側から漂白する方法です。歯科医師の指導のもとで行う、専門的な医療行為の一環となります。ホームホワイトニングの仕組みは、歯科医院で処方された「過酸化尿素」を主成分とするジェル状の薬剤を、自分専用に作られたマウスピースに注入し、毎日一定時間(通常は一日二時間程度)装着するというものです。過酸化尿素は、口の中で分解されて「過酸化水素」となり、この過酸化水素がエナメル質を通過して内部の象牙質にまで浸透します。そして、歯の黄ばみの原因となっている有機性の着色物質を化学的に分解(漂白)することで、歯そのものの色を明るくしていくのです。市販の歯磨き粉が表面の汚れを落とすのに対し、ホームホワイトニングは歯の内部から色を白くするため、より高いホワイトニング効果が期待できます。効果が現れるまでには、通常二週間から一ヶ月程度の期間が必要ですが、ゆっくりと白くしていくため、色の後戻りが少なく、自然で透明感のある白さに仕上がるのが特長です。しかし、この本格ケアには、いくつかの注意点があります。まず、これは自費診療であり、費用はマウスピースの製作と薬剤の費用を合わせて、数万円程度かかります。また、治療期間中は、薬剤の効果を最大限に引き出すため、コーヒーやカレー、赤ワインといった色の濃い飲食物を控える必要があります。副作用として、一時的に歯がしみやすくなる「知覚過敏」の症状が出ることがありますが、多くは治療を中断したり、薬剤の濃度を調整したりすることで治まります。そして最も重要なのは、必ず歯科医師の診断と指導のもとで行うことです。虫歯や歯周病がある状態でホワイトニングを行うと、症状を悪化させる危険性があります。まずは口の中を健康な状態にしてから、安全に治療を始めることが大前提となります。