歯の根元に、痛みのない黒ずみを見つけ、歯科医院を受診した場合、その原因に応じて、どのような治療法が選択され、費用はどれくらいかかるのでしょうか。治療法は、黒ずみの正体が何かによって大きく異なり、健康保険が適用されるかどうかも変わってきます。まず、原因が「着色(ステイン)」や「軽度の歯石」であった場合。この場合は、歯科医院での「クリーニング(PMTC)」が基本的な治療となります。専用の機械と研磨ペーストを使って、歯の表面に付着した汚れを徹底的に除去します。これにより、歯が本来持つ色を取り戻すことができます。費用は、自費診療となることが多く、数千円から一万円程度が目安です。原因が「虫歯(根面う蝕)」であった場合は、当然ながら保険適用の虫歯治療となります。虫歯の範囲が小さければ、その部分を削り、「コンポジットレジン」という白いプラスチックの詰め物をします。治療は一日で終わり、費用は一本あたり数千円程度です。虫歯が広範囲に及んでいる場合は、歯の根元をぐるりと覆うように詰め物をするため、より複雑な処置が必要となり、費用も少し高くなります。原因が「歯肉縁下歯石」によるものであった場合は、歯周病治療の一環として、保険適用で「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」という処置が行われます。これは、歯周ポケットの奥深く、歯の根にこびりついた黒い歯石を、特殊な器具を使って徹底的に除去する治療です。複数回に分けて行われることが多く、全体の費用は一万円前後になることもあります。過去の「金属の詰め物」が原因で黒ずんでいる(メタルタトゥー)場合、その金属を交換する治療が考えられます。保険適用の白い詰め物(CAD/CAM冠など)に交換することも可能ですが、より審美性や耐久性を求める場合は、自費診療の「セラミック」に交換するのが一般的です。セラミック治療は、詰め物(インレー)なら五万円以上、被せ物(クラウン)なら十万円以上と高額になります。「神経が死んだ歯(失活歯)」の黒ずみを改善する場合も、自費診療となります。歯の内側から薬剤で白くする「ウォーキングブリーチ」は数万円、歯全体を覆う「セラミッククラウン」は十数万円が目安です。このように、治療法と費用は様々です。まずは正確な診断を受け、歯科医師とよく相談して、自分に合った治療法を選択することが大切です。