コーヒーや紅茶、赤ワイン。日々の生活に彩りを与えてくれるこれらの飲食物は、同時に私たちの歯に「着色汚れ(ステイン)」を残す原因ともなります。鏡を見て、歯の黄ばみや茶色いシミが気になり始めた時、「まずは自分で何とかしたい」と考えるのは自然なことです。しかし、やみくもにセルフケアを始める前に、その着色汚れが本当に自分で落とせるレベルのものなのか、それとも専門家の助けが必要なものなのかを、ある程度見極めることが重要です。まず、「自分で落とせる可能性のある着色汚れ」とは、歯の表面に付着した、比較的最近のステインです。これは、飲食物の色素が、歯の表面を覆う「ペリクル」というタンパク質の薄い膜に付着した状態です。ホワイトニング効果を謳う歯磨き粉や、歯の消しゴムといった市販のアイテムを正しく使うことで、ある程度は薄くしたり、除去したりすることが期待できます。日々の食事による全体的な黄ばみなどがこれにあたります。一方、「自分で落とすのが難しい、あるいは危険な着色汚れ」も存在します。長年にわたって蓄積され、エナメル質の内部にまで染み込んでしまった頑固なステインは、表面的なケアだけではほとんど効果がありません。また、歯の溝や、歯と歯のあいだにできた「黒い線」や「茶色い点」は、単なる着色ではなく、「虫歯」である可能性が非常に高いです。これを着色と勘違いして自分でこすったりすると、症状を悪化させるだけです。さらに、歯の色そのものが内側から変色しているケースもあります。例えば、過去に神経を抜いた歯が黒ずんでいたり、特定の抗生物質(テトラサイクリン系)の副作用で歯に縞模様ができていたりする場合です。これらは、歯の表面の問題ではないため、セルフケアで白くすることは不可能です。セルフケアの基本は、「歯の表面に付着した、軽度な汚れ」が対象であると心得ること。そして、少しでも「これはただの汚れじゃないかも?」と感じたら、無理に自分で解決しようとせず、まずは歯科医院でプロの診断を仰ぐことが、安全かつ確実な道なのです。
その着色汚れ、自分で落とせる?落とせない?見分け方の基本