前歯が小さい、形が気になる、少しだけ隙間がある。そんな悩みを抱えているけれど、歯をたくさん削ったり、大掛かりな治療をしたりするのは抵抗があるという方に、ぜひ知ってほしい治療法があります。それが「ダイレクトボンディング」です。ダイレクトボンディングとは、コンポジットレジンという歯科用の白いプラスチックを、歯に直接盛り付けて形を整える治療法です。まるで粘土細工のように、歯科医師がその場で歯の大きさや形をミリ単位で調整し、理想的な見た目へと仕上げていきます。この治療法の最大のメリットは、歯を削る量を最小限に抑えられる、あるいは全く削らずに治療できる点にあります。矮小歯のように健康な歯を大きく見せたい場合、歯の表面を少し荒らす程度でレジンを接着させることができるため、大切な歯質を温存できます。また、治療が通常は一日で完了するのも大きな魅力です。歯の型取りなども必要なく、歯科医院を訪れたその日のうちに、コンプレックスだった口元が生まれ変わるのです。費用面でも、セラミックを使った治療に比べて比較的安価であるため、審美治療の入り口として試しやすい選択肢と言えるでしょう。例えば、上の前から二番目の歯が一本だけ小さい「矮小歯」の場合、その歯にレジンを盛り付けて隣の歯と大きさのバランスを整えるだけで、口元全体の印象は劇的に変わります。歯と歯の間の隙間を埋めることも可能です。しかし、ダイレクトボンディングにもデメリットはあります。レジンはプラスチックであるため、長年使用していると水分を吸収して変色したり、セラミックに比べて強度が劣るため、欠けたりすり減ったりする可能性があります。そのため、定期的なメンテナンスや、数年後のやり直しが必要になることも念頭に置く必要があります。とはいえ、その手軽さと歯への優しさは、他の治療法にはない大きな利点です。歯の小ささに悩む人が、自信を取り戻すための一歩として、非常に有効な選択肢の一つであることは間違いありません。
前歯の小ささを治すダイレクトボンディング