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子供が歯の治療で麻酔をすることは、本人にとっても親にとっても、大きな不安を伴うものです。治療中の痛みを取り除くためには不可欠ですが、治療が終わった後、麻酔が切れるまでの数時間は、大人の場合以上に、保護者の細やかな注意と見守りが絶対に必要となります。なぜなら、子供は麻酔による「感覚の麻痺」を正しく理解できず、思わぬ事故につながる危険性が高いからです。子供の治療後、親が最も注意すべきポイントは、「唇や頬を噛んだり、吸ったり、いじったりさせない」ことです。麻酔で感覚がなくなった唇や頬を、子供は「自分の体ではないような、面白いもの」と感じてしまいます。そして、その不思議な感覚から、つい唇を噛んでみたり、吸ってみたり、指でつねってみたりするのです。感覚がないため、痛みを感じることなく、無意識のうちに強い力で傷つけてしまいます。その結果、麻酔が切れた後に、唇がパンパンに腫れ上がったり、大きな口内炎や血豆ができてしまったりすることがあります。治療した歯の痛みはなくても、この二次的な怪我の痛みで、食事ができなくなったり、泣き続けてしまったりするケースは、小児歯科では日常的に見られる光景です。このような事故を防ぐために、親ができることは何でしょうか。まず、治療が終わったら、歯科医師や歯科衛生士からの注意事項を、親子でしっかりと聞くことが大切です。「麻酔が切れるまで、唇を噛まないように、しっかり見ていてあげてくださいね」という言葉の重みを、親がまず理解する必要があります。そして、麻酔が切れるまでの二時間から三時間は、子供から目を離さず、常に行動を観察します。食事やおやつはもちろん与えません。子供が口元を気にし始めたら、「バイキンさんがまだ眠っているから、起こしちゃダメだよ」「面白い感じがするけど、触らないでおこうね」などと、子供にも分かる言葉で、優しく、しかし繰り返し注意を促します。可能であれば、子供が好きなDVDを見せたり、本を読んであげたりと、口元から気をそらすような工夫をするのも非常に効果的です。子供の安全は、親の注意深さにかかっています。治療後の数時間、しっかりと寄り添ってあげることが、余計なトラブルを防ぐ一番の薬となるのです。