原因不明の頭痛に悩まされていませんか。特に、片側のこめかみや目の奥がズキズキと痛む、鎮痛剤を飲んでもすっきりしない。そんな症状がある場合、その痛みの発生源は、頭ではなく「歯」にある可能性を疑うべきです。歯の内部には「歯髄(しずい)」と呼ばれる、神経や血管が詰まった非常に敏感な組織があります。虫歯がエナメル質や象牙質を突き破り、この歯髄にまで達すると、「歯髄炎」という激しい炎症が起こります。この歯髄炎こそが、耐えがたい歯痛と、それに関連する頭痛の主な原因となるのです。歯髄炎の痛みは、しばしば「拍動性」と表現されます。心臓の鼓動に合わせてズキン、ズキンと脈打つような痛みが特徴で、夜間や体が温まった時に増悪する傾向があります。この強烈な痛みの信号は、顔の感覚を司る「三叉神経」という太い神経ハイウェイを通って脳へと伝達されます。問題は、脳がこの信号を受け取った時に起こります。痛みの信号があまりにも強烈であるため、脳はどこから痛みが来ているのかを正確に判断できなくなり、一種のパニック状態に陥ります。その結果、同じ三叉神経が支配している、歯とは別の領域、例えばこめかみ、側頭部、頬、目の奥といった部分にも痛みが広がっているかのように感じてしまうのです。これが「関連痛」の正体です。つまり、あなたが感じている頭痛は、実際には頭が痛いのではなく、歯の神経が上げている悲鳴を、脳が誤って「頭痛」として認識している状態なのです。この場合、いくら頭痛薬を飲んでも、大元である歯の炎症が治まらない限り、根本的な解決にはなりません。痛みは一時的に和らぐかもしれませんが、薬の効果が切れれば再び激しい痛みがぶり返します。もし、歯の痛みを伴う頭痛、あるいは原因不明の片側性の頭痛に悩んでいるなら、まずは歯科医院を受診してください。その辛い頭痛は、歯の神経を救うための治療で、嘘のように消え去る可能性があるのです。
その頭痛は歯の神経の悲鳴かもしれない