歯科医院で歯ぎしりを相談した際に、まず間違いなく提案される最も標準的で効果的な治し方、それが「ナイトガード(マウスピース)」の装着です。透明な樹脂で作られたこの装置は、多くの人の歯と顎を、夜間の破壊的な力から守っています。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、ナイトガードの役割と注意点を正しく理解しておく必要があります。まず、最も重要なことは、ナイトガードは歯ぎしりという癖そのものを「治す(なくす)」ための装置ではない、という点です。その真の目的は、歯ぎしりによって生じる様々な有害事象から歯や顎を守る「防御装置」としての役割にあります。具体的には、主に三つの効果が期待できます。第一に「歯の保護」。ナイトガードがクッションとなり、上下の歯が直接擦れ合うのを防ぐため、歯の摩耗や破折を物理的に防ぎます。第二に「顎関節への負担軽減」。歯ぎしりの強大な力をナイトガード全体で受け止め、分散させることで、特定の歯や顎関節に集中する負担を和らげます。第三に「筋肉の緊張緩和」。ナイトガードを装着することで、噛み合わせの高さがわずかに変わり、顎の位置が安定します。これにより、顎を動かす筋肉の異常な緊張が解け、リラックスした状態に導く効果があるのです。歯科医院で作成するナイトガードは、患者さん一人ひとりの歯型に合わせて精密に作られ、主に保険適用の硬い樹脂(ハードタイプ)が用いられます。市販の、お湯で柔らかくして自分で成形するソフトタイプもありますが、噛み合わせの知識なく使用すると、かえって症状を悪化させる危険性があるため、専門家による作成が強く推奨されます。作成費用は保険適用で五千円前後が一般的です。使い始めは違和感があるかもしれませんが、数日で慣れることがほとんどです。大切なのは、毎日の洗浄を欠かさず清潔に保つこと、そして定期的に歯科医院で調整を受け、噛み合わせの変化や装置の摩耗をチェックしてもらうことです。ナイトガードは、歯ぎしりと上手に付き合っていくための、最も信頼できるパートナーと言えるでしょう。
歯ぎしり治療の第一選択ナイトガードの効果と注意点