物心ついた時から、私は自分の笑顔が好きではありませんでした。友達と写真を撮っても、いつも口を固く閉じて微笑むだけ。思いっきり歯を見せて笑うことが、どうしてもできなかったのです。原因は、私の前歯でした。周りの子と比べて、明らかに二回りほど小さいのです。特に、上の前から二番目の歯は、ちょこんと生えているだけで、歯と歯の間には大きな隙間が空いていました。子供の頃は「すきっ歯」とからかわれることもありましたが、成長するにつれて、その悩みはより深刻なコンプレックスへと変わっていきました。大学に入り、新しい友人関係を築く中で、自分の容姿をより意識するようになりました。みんなが屈託なく笑い合う輪の中で、私だけが口元を手で隠すように笑う。そんな自分が嫌でたまりませんでした。就職活動が始まると、その悩みはピークに達します。面接では、明るくハキハキとした印象が重要だと分かっていながら、歯を見せるのが怖くて、どうしても表情が硬くなってしまうのです。ある面接で、面接官から「何か悩みでもありますか」と尋ねられた時、私は言葉に詰まってしまいました。その夜、鏡に映る自分の顔をじっと見つめました。この小さな歯のせいで、私はどれだけのチャンスを逃し、どれだけ自分を偽ってきたのだろう。涙が止まりませんでした。もう、このコンプレックスに人生を振り回されるのは終わりにしたい。その一心で、私はインターネットで審美歯科について調べ始めました。最初は怖くて、費用も心配でした。しかし、カウンセリングで先生が私の悩みを真摯に受け止め、治療法を丁寧に説明してくれた時、長年の心のつかえが取れていくような気がしました。治療を決意したあの日が、私の人生の転機でした。小さな歯は、ただの身体的な特徴ではありません。時には、人の心まで小さくさせてしまう、重い鎖にもなり得るのだと、私は自身の経験を通して痛感しています。