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麻酔が効きにくい人、切れにくい人の特徴とは
同じ治療を受けて、同じ麻酔薬を使っているはずなのに、「自分は麻酔が効きにくい」「麻酔がなかなか切れない」と感じる方はいませんか。歯科麻酔の効果には、実は無視できない「個人差」が存在します。その効き方や切れ方が人によって異なるのには、いくつかの体質的、あるいは状況的な理由が考えられます。まず、「麻酔が効きにくい」と感じる人の特徴です。最も多いのが、「炎症が強い」ケースです。歯の神経が激しく炎症を起こしていたり、歯の根の先に膿が溜まっていたりすると、その部分の組織が酸性に傾きます。一般的な歯科用麻酔薬は、アルカリ性の状態で効果を発揮するため、組織が酸性だと薬が十分に作用せず、効きが悪くなってしまうのです。「痛みが強い時に治療すると、麻酔が効きにくい」と言われるのは、このためです。また、「骨が硬く、厚い」方も、麻酔薬が浸透しにくく、効きにくい傾向にあります。特に下の奥歯は、骨が緻密であるため、麻酔が効きにくい場所として知られています。さらに、「強い不安や緊張」も、麻酔の効果を妨げる一因となります。緊張状態にあると、交感神経が優位になり、痛みに対して過敏になるため、通常なら十分な麻酔量でも、痛みを感じてしまうことがあります。日頃から「お酒に強い」人も、肝臓での薬物代謝能力が高いため、麻酔薬も早く分解されてしまい、効きにくいと感じることがあるようです。一方、「麻酔が切れにくい」と感じる人の特徴としては、まず「肝機能」が関わっている可能性があります。麻酔薬は主に肝臓で分解されるため、肝臓の代謝機能が低い方は、薬の分解に時間がかかり、麻酔の効果が通常より長く持続することがあります。また、歯科医師が意図的に「効果が長く続くタイプの麻酔薬」を使用した場合も、当然、切れるまでの時間は長くなります。これは、親知らずの抜歯など、術後の痛みが強く予想される場合に選択されます。その日の「体調」も影響します。疲労が溜まっていたり、睡眠不足だったりすると、体の代謝機能全体が低下し、麻酔が切れにくくなることがあります。このように、麻酔の効果には様々な要因が絡み合っています。もし、ご自身が効きにくい、あるいは切れにくい体質だと感じている場合は、事前にそのことを歯科医師に伝えておくと、より安心して治療を受けることができるでしょう。