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虫歯で歯が茶色くなるメカニズムとは
「虫歯は黒い」というイメージが一般的ですが、実は虫歯の初期から中期にかけて、歯が「茶色く」見えることは非常によくあります。この茶色い変色は、虫歯が歯の内部で静かに、しかし着実に進行していることを示す重要なサインです。そのメカニズムを理解することは、早期発見・早期治療の重要性を知る上で役立ちます。虫歯は、ミュータンス菌などの虫歯菌が、糖分を分解して「酸」を作り出すことから始まります。この酸によって、歯の表面のエナメル質からカルシウムやリンといったミネラルが溶け出す「脱灰」が起こります。このごく初期の段階では、歯は白く濁ったように見えます。しかし、この状態が続くと、エナメル質はさらに溶かされて多孔質(小さな穴がたくさん空いた状態)になり、その内側にある象牙質が透けて見えるようになります。象牙質はもともと黄色っぽい色をしているため、この段階で歯は黄色から薄茶色に見え始めます。さらに虫歯が進行し、エナメル質を突破して象牙質にまで達すると、事態はさらに進みます。象牙質はエナメル質よりも柔らかく、有機質を多く含んでいるため、虫歯の進行スピードは格段に速くなります。そして、この破壊された象牙質の組織に、飲食物の色素などが入り込み、沈着することで、歯はより明確な茶色に変色していくのです。特に、奥歯の溝や、歯と歯の間といった、汚れが溜まりやすく見えにくい場所にできた虫歯は、本人が気づかないうちに茶色く変色し、内部で大きく広がっていることが少なくありません。この段階では、まだ痛みを感じないことも多いため、「ただの着色だろう」と見過ごされがちです。しかし、この茶色い変色は、歯の構造が破壊されつつあるという紛れもない証拠です。このサインを無視し続けると、やがて虫歯は神経にまで達し、激しい痛みを引き起こし、治療も複雑で大掛かりなものになってしまいます。歯の茶色い変色に気づいたら、それは歯からのSOSと捉え、速やかに歯科医師の診断を仰ぐべきです。