-
私が歯の茶色い変色を放置した末路
私の前歯が、なんとなく茶色っぽくくすんでいることに気づいたのは、社会人になって数年が経った頃でした。毎日最低三杯は飲むコーヒーと、仕事の合間の一服が原因だろう。そう軽く考えていました。市販のホワイトニング歯磨き粉を使えば少しは白くなるような気もしましたが、すぐにまた元に戻ってしまいます。痛みもないし、まあこんなものだろうと、私はその茶色い歯を大きな問題とは捉えず、長年放置し続けていました。転機が訪れたのは、三十代半ば、結婚を意識し始めた頃です。婚活パーティーで出会った女性と良い雰囲気になり、食事に行く機会が増えました。しかし、彼女と向かい合って話していると、自分の口元が気になって仕方がないのです。この茶色い歯を、彼女はどう思っているのだろう。そう思うと、自然な笑顔が作れず、会話にも集中できませんでした。このままではいけない。私はついに重い腰を上げ、審美歯科のカウンセリングを予約しました。診察室で、歯科医師は私の歯を見るなり、こう言いました。「これは単なるステインだけではありませんね。歯の表面のエナメル質が、酸によって溶かされる酸蝕症も併発しています」。原因は、やはりコーヒーと、私が健康のためにと毎日飲んでいたスポーツドリンクでした。酸によって表面が荒れた歯は、ステインがより付着しやすくなっていたのです。さらに、レントゲンを撮ると、奥歯には茶色いシミに見えた部分の下で進行している虫歯も見つかりました。治療計画は、まず全体のクリーニングと虫歯治療、そして変色が著しい前歯にはセラミックを被せるという、私が想像していたよりもずっと大掛かりなものになりました。費用も時間も、もっと早く来ていれば、簡単なクリーニングだけで済んだかもしれないのです。見た目の問題だと軽視していた歯の茶色い変色が、実は歯の健康そのものを蝕むサインだったという事実。私は、長年の放置を心から後悔しました。